最期の和了
21時30分をまわった。
終業まであと30分。
おそらくこれが最期の半荘になる。
今までいくつかの雀荘で働いてきた。
その都度こういう瞬間は迎えてきた。
その時は別にさしたる感情も抱かなかった。
しかし今回は本当にメンバーとして最期の半荘になる可能性が高い。
そう思うと何か込み上げてくるものが・・・
うーん、まったく無いや(笑)
お客様には辞めることを公言していない。
お客様にとってはいつもと変わらないただの一半荘にすぎない。
私が個人的な感情を表に出すわけにもいくまい。
気持ち的には桜井章一ばりの「ひとりだけの引退試合」だ。
下家の常連のおばあちゃんが「君はいい子だね。70年生きてるから狂いはないのよ。」なんて自分の目を指差しながら急に言う。
笑って「そんなことないですよ」と答えるのが精一杯だ。
今日に限ってそういうことを言うのも70年生きてきた勘なのだろう。
それにしても最期の半荘だというのに全く手も足も出ない。
所詮20年間負け続けの私などこんなものか。
迎えた南3局 ドラ![]()
東家 30500
南家 32700
西家 30700
北家の私は6100点持ちのラス目。
親番無しである。
この絶望的状況で10巡目にテンパイして即リーチ。
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しかしというか、やはりというか![]()
は自分から6枚見えている。
残りは
1枚、
1枚
安めの
ではアガらないつもりでいた。
ここで裏ドラが乗らなければ3900や1300-2600しかないアガリを拾うわけにはいかない。
オーラスが苦しくなるだけだ。
出アガリならば裏1で12000。
しかし一人沈みの現状ならば、ツモって全員の点棒を減らしたいところだ。
心の中では力いっぱいツモるものの、むなしく最後のツモが過ぎた。
それならば親のテンパイに期待したいところだが、下家はベタオリでノーテン模様。
諦めたそのとき、テンパイを入れてリードを広げてオーラスを迎えたいトップ目の対面が、
下家の打牌を仕掛けて、私にもう一度ツモをまわしてくれた。
この対面の動きによって高め
をツモることができた。
裏ドラの願いは叶わなかったが3000-6000。
これでオーラスが面白くなった。
オーラス
私は西家で18100持ち
東家 29700(11600差)
南家 27700(9600差)
北家 24500(6400差)
前局の和了で満貫ツモでトップの位置まで来た。
8巡目
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ツモ
ドラ![]()
を切ってリーチ。
ツモれば無条件3着浮上。
裏1でトップだ。
数巡後、対面から
が出る。
当然スルーする。
裏が乗ればラスから2着だ。
それはわかっている。
しかし裏が乗らなければラスだ。
それならばまず確実に3着に浮上でき、うまくいけばトップまでいくツモ和了に賭ける。
順位の変わらない和了はご法度だ。
「客打ちならロンだけどね」
こっそり頭の中では「ロン」発声している。
その日の対面の状態はすこぶる悪かった。
常連である対面は私との相性もすこぶる悪い。
裏が乗れば対面はトップからラスに落ちる。
そして前局の対面の動きによる私のアガリ。
奇しくも同じ![]()
待ちである。
アガるには充分過ぎる位のオカルト材料が揃っている。
オカルト的判断でなくとも、この後![]()
をツモって裏ドラがのってトップになる期待値と、今アガって裏ドラがのって2着になる期待値を比べたら、後者が勝るのではないか。
アガる人も多いであろう。
メンバーでも裏1枚までの条件なら順位が変わらなくてもアガッてもいいと思う。
(もちろん裏ドラに頼り切るのではなく、できるだけ自力で点数を作るべきであるが。)
しかしである。
トップ目を2着に叩き落とした上で、アガラスなどできるわけもあるまい。
そしてどんなに裏ドラの乗る可能性を感じても、何の証明もできない。
メンバーはオカルトを語るべきではないのだ。
すぐに
をツモった。
祈るようにめくった裏ドラ表示牌は
だった。
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